平成12年度には、平成11年度に開発した高精度CO濃度測定システムを用いて広範な観測を実施した結果、以下のような成果が得られた。(1)日本上空の対流圏における高度別のCO濃度の季節変化が明らかになった。CO濃度の季節変化の振幅は約90ppbvであり、極小値は8-9月に、極大値は3月に現れた。CO濃度の極小は、主に夏季に強まるOHラジカルとの消滅反応によるものと考えられる。CO濃度の季節変化は対流圏上層でも明瞭であり、振幅は高度と共に単調に減少することが判明した。(2)日本上空におけるCO濃度の年平均値は、地表におけるそれぞれの放出を反映して、0-2kmで最も高く、8km-対流圏界面で最も低い値を示した。CO濃度の年平均値では非常に大きな鉛直勾配が見られ、0-2kmと8km-対流圏界面とでの差は、平均65ppbvであった。(3)西太平洋域における船舶を用いた観測によって、緯度に応じたCO濃度の季節変化の違いが明らかになった。季節変化の振幅も北緯30度付近において約125ppbvと最大になり、南北に向かって小さくなる。北半球中高緯度では極大、極小値は3月上旬から5月上旬、及び8月上旬から9月上旬に現れる。CO濃度の季節変化の振幅は南北両半球において大きく異なり、南半球では20〜40ppbvと小さくなる。(4)二次元光化学大気輸送モデルを用いて、西太平洋域において観測された地表のCH4及びCO濃度から、それぞれの地表面フラックスを同時に推定することを試みた。推定されたCH4及びCOの全球年放出量は、それぞれ540TgCH4/year、1220TgCO/yearであり、それぞれの70及び73%は北半球における放出であった。CH4及びCOのOHラジカルとの反応による年消滅量はそれぞれ520TgCH4/year及び2140TgCO/yearと推定され、従ってCOの年消滅量の約40%はCH4の酸化消滅に伴うCO生成によって相殺されていることが示唆された。
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