研究課題/領域番号 |
11740271
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
気象・海洋物理・陸水学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
上原 克人 九州大学, 応用力学研究所, 助手 (80223494)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2000年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1999年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 潮汐シミュレーション / 海水準変動 / 完新世 / 古環境復元 / 気候変動 / 東シナ海 / 黄海 / 河川堆積物 / 海水準上昇 / 長江 |
研究概要 |
本研究では最終氷期最盛期以降過去約2万年間に生じた黄海・東シナ海の形状変化に起因する潮汐場の変遷を数値実験により明らかにした。初年度には約120mに達する後氷期の海水準変動の効果を、最終年度である本年度は当該海域に特徴的な堆積作用まで含めた形状変化の影響を検証し、黄海・東シナ海の潮汐・潮流場は過去約2万年間に大きく変化していたことが推測された。得られた主な知見は以下の通りである。1)今日より海水準が100m以上低かった最終氷期最盛期には、湾奥にあたる対馬海峡西方の潮差が現在よりかなり大きかった。2)低海水準時の東シナ海陸棚域の潮流は今日よりも強く、ほぼ単一方向に振動していたため現存のサンドリッジが形成されやすい条件を備えていた。3)現在黄海に3つ存在する無潮点は海水準上昇に伴い約8千年前までに出現した。4)東シナ海・黄海での最大潮差は低海水準時には朝鮮半島南西岸に分布し、黄海沿岸は潮差が現在より小さかったが、その後の海面上昇・海域拡大に伴って最大潮差域が現在の朝鮮半島西岸へと移動していった。一連の変化は主に黄海の固有周期の変化により説明出来た。5)中国沿岸の海岸線が現在より100km以上後退していた約6千年前には旧長江河口湾域にて潮流の向きが放射状に分布し、河口付近で非常に潮差が大きかった。この放射状分布は、海水準変動に伴って発達した黄海の定在波成分と、外洋からの進行波成分の重複によって解釈出来る。6)堆積の影響は低海水準時には、旧長江河口湾など一部に限られるが、約6千年前以降の高海水準時には中国沿岸の潮流場の変化に大きく関係していた。今日東アジア有数の潮汐が観測される東シナ海の海洋古環境の解明には過去の潮汐場の把握が不可欠で、本研究の成果は地質資料の解釈を進める上で有用であると考えられる。さらに今日の東シナ海の潮汐に対する力学的理解を深める上で役立つことも期待される。
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