研究概要 |
1.パンサラッサの陸棚浅海域で形成されたデボン系石灰岩の形成に,石灰微生物類(RothpletzellaやWetheredellaなど)が極めて大きな役割を果たしている.一方,同海域の下部石炭系では,微生物起源のペロイド状粒子や石灰藻などの役割が大きい.絶滅事変は,パレオテチス域と同様に大型生物と微生物相双方に大きな変化を与えている.とくにパンサラッサ域における石炭紀前期の回復過程の解明には,火成活動の影響も考慮すべきである. 2.パレオテチス域のペルム系礁性石灰岩では,特異的に堆積同時性のセメントが主要な構成要素である場合が多い.一方,下部トリアス系では,マイクロバイアライトが特徴的であり,その存在は,絶滅直後の環境の一時的な悪化のみならず,ペルム紀からトリアス紀に至る長期的な海洋環境の特異性をも示唆している可能性が高い. 3.石炭紀とトリアス紀とでは,回復過程に関与した生物相はもちろんのこと,海洋環境要因(海水温や炭酸カルシウムの飽和度など)自体が大きく異なっている.海洋環境の時代特異性の存在が指摘できる. 4.中部ペルム系の海綿礁から,六射サンゴ様化石(Houchangocyathus)が産する.ペルム紀末の絶滅現象は差別的に進行し,中生代造礁生物群の多くは古生代に起源する.とくに南中国地塊は,絶滅期以前から「避難場所」であったと同時に,中生代生物群の「試験的な新天地」であったという新たな視点が強調される. 5.回復現象は,パレオテチス-パンサラッサ域を問わず,海洋全域でほぼ同時に生じている.回復の遅延には,生物的要因のみならず,海洋環境要因(特異環境の長期的支配)も強く関与していた. 今後,現世での実例を十分に踏まえながら,微生物類の変遷様式と回復過程との関連性を解明していくことが必要である.
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