研究概要 |
本研究では中華人民共和国を対象地域として,鉱化植物化石の産出記録もしくは産出情報のある地域の現地調査と各地の博物館・研究所に保管されている植物化石の調査を行った. 鉱物化化石相の解明 新彊ウイグル自治区のウルムチ郊外、将軍廟周辺、遼寧省阜新周辺、河北省中央部のジュラ系および白亜系露出地域を調査した。将軍廟周辺では多数の珪化木を確認した.阜新周辺ではスギ科に属する針葉樹の繁殖器官とゼンマイ科に属するとおもわれるシダの根茎を採集し、河北省ではシダの根茎を多数採集した。これらはいずれも鉱化(珪化)した植物化石であり、内部構造が保存されていた。 得られた標本のうち、将軍廟周辺の上部ジュラ系産化石からは、3種の材を同定した。うち一種はXenoxylon属の新種とした。材の内部構造から、当時のこの地域に、季節変化があったこと、比較的湿潤であったことが明らかとなった。(Wang,Zhang and Saiki Ken'ichi,2000) 遼寧省西部からはスギ科と思われる球果を得た。現在記載中である。 古植物地理区に関する考察 現地調査前および現地調査にともなって行われた、中国全域の白亜系産植物化石の文献調査および標本調査の結果、従来提案されてきた様々な中国白亜紀古植物地理区に関して、統一的に解釈できることが明らかになった。中国の白亜紀古植物地理区についてはVakhrameev,Kimura,Sun Ge,Zhow Z.Y.などにより多様な地理区が設定されてきた。今回、1960年以降に公表されたほぼ全ての記載論文をデータベース化し統計処理を行った結果、従来の説は、それぞれ基準となる地点が違うために生じた差であることが明らかになった(Saiki and Wang印刷中)。
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