研究概要 |
安山岩質火山の大規模噴火を10^<-1>〜10^0km^3のマグマを噴出する噴火と定義し,その噴火様式の実態を知るために桜島火山での事例研究を行った.また,全国の安山岩質火山の溶岩の破片状結晶の含有量の比較を行った. 1 桜島火山1914-1915年噴火で噴出した西側と東側の両山腹の溶岩流について,地質調査と室内分析を行った.野外での地形と岩相観察の結果,西側の溶岩流の上流部は火砕丘であり,中流部までは溶結した火砕物から成ること,下流部は通常の溶岩流の特徴を有することがわかった.また,中流部の火砕物の粒度組成は降下性であることを示唆する.中流部の火砕物は顕著なeutaxitic組織を呈し,破片状結晶に富む.西側と東側の両山腹の溶岩の破片状斜長石結晶量(BPL)を測定した結果,東側全域と西側の下流部はBPL量が低く,西側の中〜上流部はそれが高い傾向がみられた.以上の結果より,西側の溶岩の中流部は火砕丘の崩壊・2次流動と密接に関連した火砕成溶岩であり,一方,西側下流部と,東側の溶岩全体は通常の溶岩であることが示唆される.これらの結果および考察は,この噴火事例の噴火様式が,爆発的噴火と非爆発的噴火の両方を行ったことを意味している.従って噴火の機構は複雑であることが予想されるが,実態解明の上で重要な事例であるものとみられる. 2 全国の安山岩質火山の溶岩の破片状結晶の含有量(BPL)の比較の結果,大半は低〜中BPL量であるが,浅間,桜島,霧島,乗鞍火山の一部に高BPLの溶岩が見い出された.前年度の成果もふまえると,安山岩質火山の大規模噴火は以下の3つに大別されるものと考えられる:1)爆発的噴火(降下軽石,軽石流ないしはスコリア流,火砕成溶岩,火砕丘をもたらす),2)非爆発的噴火(溶岩の溢流を主とし,小規模な降下火砕物を伴う)および,3)その他(溶岩ドーム形成など).
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