研究課題/領域番号 |
11740319
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物理化学
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
花屋 実 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (50228516)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2000年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1999年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | ダイポールガラス / 誘電体 / 固溶体 / ピリジニウム塩 / 相転移 / ガラス転移 / 誘電緩和 / 非平衡 / 強誘電 / 反強誘電 / 交流誘電率 |
研究概要 |
本研究は、未だ理解の遅れているダイポールガラスについて熱および誘電的特性化をはかり、ダイポールガラス状態に関する詳細な知見を得ることを目的として行った。このために、新たなダイポールガラス形成固溶体として期待がもたれる強誘電体PyHBF_4(Py=C_5NH_5)と反強誘電体PyHPF_6との混合結晶試料を合成し、精密熱測定および交流誘電率測定を行った。 その結果、PyH(BF_4)_<1-x>(PF_6)_x結晶試料の組成が中間組成(x=0.5)に近づくにつれて、純物質の強誘電-常誘電あるいは反強誘電-常誘電相転移に基づく相転移温度が低下し、相転移にともなう熱および誘電異常が減少すること、さらに、0.41【less than or equal】x【less than or equal】0.65の組成領域では相転移が消失することが観測された。この試料の組成に依存した連続的な相転移挙動の変化から、PyH(BF_4)_<1-x>(PF_6)_x結晶が全組成領域で固溶体を形成することが確認された。また、PyH(BF_4)_<1-x>(PF_6)_x固溶体においては液体窒素温度領域に誘電緩和現象が観測され、誘電緩和時間はアレニウス的温度依存性を示した。さらに、熱測定においてはガラス転移現象が見いだされ、ガラス転移温度と誘電緩和時間が10^3sとなる温度とのよい一致から、このガラス転移はダイポール再配向運動の凍結に基づくことが明らかとなった。これは、ダイポールガラス凍結を熱的に観測した初めての例である。 これまで、ダイポールガラスについては、ダイポールガラス状態が「熱力学的平衡状態にある一つの相」であるのか「非平衡凍結状態」であるのか、その定義が曖昧なままで議論がなされてきた。本研究によって、ダイポールガラス転移が熱的にガラス凍結現象として観測されたことから、ガラス転移温度以下の非平衡凍結状態こそダイポールガラス状態として定義されるべき状態であることが明らかとなった。
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