研究概要 |
デンドリマーは単一の分子量を有する新しいタイプの巨大分子であり、その分子構造や機能性に興味を集めている。今回デンドリマーの発光特性に関する研究を行い、分岐したケイ素-ケイ素鎖からの発光期校を解明し、二重蛍光という興味深い知見を得ることに成功した。 ポリシランデンドリマー1Gの77Kにおける3-メチルペンタン剛性マトリックス中での時間分解発光スペクトルを測定したところ、紫外域(350nm)と可視領域(460m)に二つの発光帯が観測された。前者の発光は直鎖Si-Si構造を有するポリシランに、後者の発光は分岐Si-Si鎖を有するポリシランに類似のものである。紫外域の発光は、パルス励起後の遅延時間の増加とともに減少し、20nsでは可視域のブロードな発光のみとなった。このような二重発光的な挙動は,他のポリシランデンドリマーOGおよび2Gにおいても観測された。このような発光の立ち上がりは、可視発光サイトへの励起エネルギー移動を示唆するものである。これはポリシランデンドリマーの直鎖Si-Si構造に局在した励起状態が、分子内エネルギー移動によって分岐Si-Si鎖近傍の励起状態となる過程に対応づけられる。しかし,OGのようなSi連鎖の短い分子においても二重発光挙動が観測されたことから、紫外発光サイトと可視発光サイトとの間のエネルギー障壁は大きくなく、両者の励起状態間でのエネルギー移動がランダムホッピング的に容易に起こり得ることが予想される。以上の結果から、ポリシランデンドリマー1Gの励起状態間のエネルギー障壁は0.92kcal/mol、無輻射失活過程のエネルギー障壁は3.17kcal/molと算出できた。本研究により、これまで不明瞭であった直鎖状ポリシランの可視部発光スペクトルの起源を特定する事ができた。
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