研究概要 |
前年度に引き続いて,3つベンズイミダゾールのベンゼン環上にスルホン酸基を導入したtris(2-benzimidazolylmethyl)amine型の水溶性配位子を用い,その亜鉛酵素モデルによるCO_2の水和について,change in pH indicator法によって水溶液中でのCO_2水和の速度定数を明らかにし,さらに酵素と同様に陰イオン性の阻害剤の効果も併せて検討した.その結果,本研究で得られた速度定数は,これまで報告されたCO_2水和の最も大きい速度定数を約3倍上回るものであることが明らかになった.この高い活性は,分子設計によって酵素中の亜鉛と同様の3つのイミダゾールと1つの水による四面体型構造と配位水の周囲に酵素同様の疎水的環境を再現したことによるものであると考えられる.阻害剤としては酵素系において代表的な阻害剤であるNCS^-とCl^-を用い,酵素系と同様に阻害剤としての効果はNCS^->Cl^-であることを明らかにした. また,本研究で用いた亜鉛錯体は,その水溶液にCO_2をバブルすると白濁しゲル状となる.固体^<13>C NMR,ガスクロマトグラフィー等の結果から,このゲル状物質はスルホン酸基と水分子によって形成された水素結合ネットワークにCO_2が包接された包接型水和物であることを明らかにすることができた. 今後,この高い活性をもつCO_2水和酵素モデルにCa^<2+>との反応を担当するカルボキシル基(-COOH)を多く含む部分を付け加え,CO_2からCaCO_3を形成する石灰化酵素のモデルとして発展させる予定である.
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