研究概要 |
リン架橋[1]フェロセノファン(1,1'-ferrocenediyl)phenylphosphine(fcppと略)をMnおよびWフラグメントに配位させたCpMn(CO)_2(fcpp)およびW(CO)_5(fcpp)を合成し、これらの錯体に0価の白金錯体(PtL_4:L=PMe_3,PPh_3)を反応させた。Pt上のホスフィンがPMe_3の場合、Pt(PMe_3)_2がフェロセン-リン結合に挿入したホスフィド架橋異核2核錯体が得られた。この錯体は、熱的に安定で配位子交換などの反応性を示さなかった。一方、Pt上のホスフィンがPPh_3の場合、同様の反応が起こるものの、Pt上の立体的込み合いのため2つのPPh_3のうちの1つが脱離した。この空いた配位座をもつ状態は、金属-金属結合と架橋カルボニル結合が形成されることで安定な構造へと変化した。しかしながら、これらの結合は熱的に解裂しやすく、容易にもとのこの空いた配位座をもつ状態に戻るため種々の反応性を示した。Cp(CO)Mn(μ-CO){μ-P(Ph)(C_5H_4FeC_5H_4)}-PtPPh_3とフェニルアセチレンとを反応させるとフェニルアセチレンの活性C-H結合が切断されフェニルエチニル基と水素がそれぞれリン原子とフェロセン基に結合したものが得られた。一方、(OC)_4(PPh_3)W(μ-CO){μ-P(Ph)(C_5H_4FeC_5H_4)}PtPPh_3を加熱するとタングステン上のPPh_3のP-Ph結合が活性化されPhがPPh_3からフェロセン上へと転移するという前例のない反応が見つかった。
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