研究課題/領域番号 |
11740373
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
無機化学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小島 隆彦 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (20264012)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2000年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1999年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | ルテニウム錯体 / ピリジルアミン配位子(TPA) / 酸化反応 / 分子認識 / ピリジルアミン配位子 / 酸化還元 |
研究概要 |
筆者はアルキルヒドロパーオキサイド(ROOH)を酸化剤とし、ビスμ-クロロルテニウム(II)-TPA2核錯体を触媒とするアルカンの触媒的酸素化反応の機構に関する研究を行った。その結果、それらの反応はルテニウム(II)中心からROOHへの電子移動を律速とするラジカル連鎖反応であることを明らかにした。そしてその反応の制御要因が、ルテニウム中心の酸化還元電位とルテニウム周りの立体効果であることを明らかにした。さらに酸素分子がラジカル連鎖キャリアーとして反応を加速していることも指摘した。 また、2つの1-及び2-ナフトイルアミド基を有するTris(2-pyridylmethyl)amine(TPA)を配位子とするルテニウム(II)錯体を合成し、そのキャラクタリゼーションを分光化学的、電気化学的手法、及びX線結晶構造解析により行った。その結果、1-ナフチル基と2-ナフチル基という芳香環の配向の違いにより、結晶状態でも溶存状態でも分子内π-π相互作用に顕著な差があることが明らかとなった。特に2-ナフチル基を有する錯体の場合、その分子内π-π相互作用は温度依存性を示し、温度可変NMR測定によりその相互作用の熱力学的パラメータを決定した。さらに、それらの錯体からη^2-side-on配位アセトニトリル錯体を合成単離した。これはRu(II)カチオン錯体としては最初の例であろう。そのアセトニトリル錯体とβ-ジケトンを反応させると、β-ジケトンの置換基Rが2つの1-ナフチル基の間に位置する三元錯体が生成することを明らかにした。その様なβ-ジケトナト錯体において、その置換基と1-ナフチル基との間にπ-π相互作用(R=フェニル)もしくはCH/π相互作用(R=メチル)が作用していることを明らかにした。 一方、TPAの3つのビリジン環の3位にメチル基を導入した3-Me_3-TPAを配位子とする新規Ru(II)錯体を合成し、そのキャラクタリゼーションをおこなった。この配位子を用いた場合、他のTPA誘導体とは異なり、立体的及び電子的効果により立体選択的にキラルなac-cis型ビスキレート錯体のみを与えることを見い出した。この結果は、3回対称なプロキラルでない分子がルテニウムへの配位により不斉化するという興味深いものである。さらにその光学活性な構造は溶存状態でもRu(II)イオンの置換不活性な性質により安定化されることを明らかにした。
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