研究概要 |
本年度は,各種溶液中で,アンダーポテンシャル析出法を用いてZn単原子層をAu(111)表面に電気化学的に構築する際に,溶液中に含まれているアニオンがどの様な影響を与えているのかを詳細に調査した。 はじめに,リン酸塩溶液中・硫酸塩溶液中・酢酸塩溶液中・過塩素酸塩溶液中に同濃度(10^<-3>M)の過塩素酸亜鉛を加えた際のAu(111)電極の電流電位曲線を調査した。これら溶液中のAu(111)面の電流電位曲線では,リン酸塩溶液中のものが,最も正電位側で非常に鋭いスパイク電流が観測された。硫酸塩溶液中および酢酸塩溶液中では,両者とも類似の電流電位曲線の形状を示し,リン酸塩溶液中で観測されたスパイク電流の電位よりも0.35Vもマイナス側にピークが観測された。過塩素酸塩溶液中では,ピーク電流やスパイク電流は観測されずブロードなUPD波のみが観測された。過塩素酸塩溶液では,硫酸塩溶液中および酢酸塩溶液中でピークが現れた電位まで電極電位を走引すると水素発生が優勢となった。また,リン酸塩溶液中でスパイクが現れた電位領域で,各々の溶液中におけるZn電析の電気量を見積もったところ,リン酸塩中では他の溶液中の3倍の電気量が見積もられた。以上より,これらの溶液中では,リン酸塩溶液中でZnの電析が最も促進されたことがわかった。これは,リン酸アニオンがZnともに電極表面に共吸着することで,安定なZn単原子層を形成するためと思われる。 さらに,リン酸アニオンや硫酸アニオンよりも電極表面に強く吸着する事が知られているハロゲン化物イオンがZn単原子層形成に対して与える影響を検討した。その結果,臭化物イオンや沃化物イオンはZn単原子層形成過程に影響を与えないことが明らかになった。 現在は,これら表面での硝酸イオン還元触媒反応について調査中である。
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