研究概要 |
我々は真正粘菌でミトコンドリアの融合とミトコンドリアDNAの組換えにかかわるプラスミドmFを発見している。「融合」と「遺伝子組み換え」は「性」現象と捉えることが可能であり、ミトコンドリアにも雌雄が存在することが示唆される。mFプラスミド中に存在するアミノ酸数640のORF640は膜貫通型のコイルドコイルタンパク質をコードしており、このコイルドコイル領域を用いたタンパク質間相互作用を基本としたミトコンドリア融合機構が予想されている。本研究では、真正粘菌のミトコンドリアDNAの全塩基配列を決定し、12のタンパク質遺伝子(cox1-3,cytb,atp6,9,nadl,3,4,5,7とrps12)、2つのrRNAと5つのtRNAを同定した。真正粘菌のミトコンドリア遺伝子には、置換型だけでなく、フレームシフトを伴う挿入型RNAエディティングが存在しているため、NADH脱水素酵素複合体のサブユニット7(nad7)のcDNAを決定し、46カ所において、計51塩基の挿入型RNAエディティングが存在することを明らかにした。また、ORFの推定より、ミトコンドリアDNA上に既知遺伝子と有意な相同性を持たない100アミノ酸以上のORFが20個存在しており、ORF14-19は転写されていることがわかった。これらのタンパク質の機能、ミトコンドリア融合との関係、高等植物における相同遺伝子の単離等は今後の課題である。
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