研究概要 |
本助成金を用いて光合成光化学系IIの結晶化を試みた。オハイオ州立大において、生物試料に関してはR.Sayreと、リピッド・キュービック・フェーズ(LCP)法に関してはM Caffereyと共同し研究は進んだ。その結果非常に微細だが結晶を得ることができた。その後、保持活性を向上させること、解析に耐えうる結晶を得るためLCP法を改良することに取り組んでいる。以下に要約する。 まず、LCP法の予備実験として,モノオレイン/ドデシルマルトシド系の相転移について調べた結果、光化学系II標品を通常可溶化状態に保持するために添加している0.03%という濃度のドデシルマルトシド存在下でも連続型LCP(Pn3mまたはla3d)が安定に存在しうることが明らかとなった。 次に、私たちがすでに確立した全く新しい方法を用い、大容量藻類培養装置を使い、形質転換緑藻であるクラミドモナスからヒスチジンタグ法により光合成光化学系II標品を大量に精製した。 続いて、光合成光化学系II標品を0.03%のドデシルマルトシドに可溶化したまま、モノオレインとさまざまな条件で混合し、安定にLCPに封じ込める条件を見出した。ただ、このLCPに封入した段階で光化学系IIは部分的に活性を失うことも判明したため、モノオレインだけでなく、これにクラミドモナス内在性の脂質であるPE,PC,MGDG,DGDGなどを活性保持のため混合することを検討した。そしてこれら脂質混合物もLCPに封入する方法を確立した。 モノオレイン単独のLCPにおいて多数の微細結晶を得たが、現在のところX線による解析には耐えない。
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