研究概要 |
今年度に前年度の平均場近似による理論的考察を発展させて、磁性元素組成と正孔濃度の向上以外にもホスト半導体の選択が磁気転移温度の向上においては重要であることを示した。この理論モデルの枠組みで定量的転移温度の説明、磁気異方性の起源、特異な磁気光学効果の温度依存性、共鳴トンネル・ダイオード構造の電流-電圧特性の振る舞いについて説明可能であることを示した。 実験的には前年度エピタキシャル成長に成功した磁性半導体(Ga,Mn)Sbと今年度エピタキシャル成長に成功した(Ga,Cr)Sbの評価を行った。どちらの材料も分子線エピタキシ法によりより成長可能であり、低温で(Ga,Mn)Sbは強磁性、(Ga,Cr)Sbは反強磁性に転移することを見いだした。どちらの結晶においても室温以上で強磁性である第二相が析出することが明らかになった。これにより。室温で磁気転移する半導体の創製に相当する、室温以上で強磁性である磁性体を含む新しい半導体複合結晶の作製を行うことに成功した。 また、III-V族磁性半導体の強磁性は正孔誘起であることを利用して、(In,Mn)As電界効果トランジスタ構造において、等温で可逆的に電界を用いた正孔数制御により強磁性転移温度を変調できることを示すことにも成功した。
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