研究概要 |
昨年度までの研究で、ZnTe(100)面上にCdTeおよびCd_<1-x>Mn_xTeを原子層エピタキシー(ALE)の手法により積層し、格子歪みによる自己組織化ドットの作製が可能であることを示した。この場合の格子不整合割合は、ZnTeとCdTeの組み合わせで6.2%であり、得られたドットの密度は約10^<11>cm^<-2>,ドットのサイズは直径20nm,高さ23nmであった。今年度はドット形成が格子不整合割合によってどのように変化するかを調べるため、下地層をZn_<1-y>Cd_yTe混晶にし、その(100)表面にCdTeおよびCd_<1-x>Mn_xTeを積層し、ドット形成の様子を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。この場合は下地のCd組成yが増加すると、CdTeとの格子不整合割合はyに比例して減少することになる。まずドット層がCdTeの場合は、下地のCd組成y<0.25の範囲では、ドットの密度はyの増加にほぼ比例して減少し、ドットサイズは増加するという結果が得られた。一方、ドット層がCd_<1-x>Mn_xTe(x〜0.06)の場合は、ドット密度はy<0.18の範囲ではほとんど変化せず、yがそれ以上になると急激に減少するという結果が得られた。またドットのサイズもyによりあまり変化しなかった。CdTeとCd_<1-x>Mn_xTeとではZn_<1-y>Cd_yTe層との格子不整合割合はほぼ同じであることから、上記のようにドット密度・サイズのy依存性が異なる原因ははっきりしないが、CdTeとCd_<1-x>Mn_xTeとの成長機構の違いが関連しているものと推測される。すなわちTe被覆面へのMn原子の付着係数はCd原子より大きいので、ドット形成に密接に関連している成長表面でのマイグレーションの度合いがCdTeとCd_<1-x>Mn_xTeで異なっているものと考えられる。 また並行してZnTe(111)面上でのCdTeドットを成長させることを試みた。ZnTe(100)面上の場合とほぼ同程度の密度のドット形成が確認された。ただサイズは、直径は同程度であったが、高さがかなり小さく、ZnTe(100)面上と比べてより平べったいドットが形成されることがわかった。
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