研究概要 |
カーボンナノチューブを原子間力顕微鏡(AFM)探針として用いる場合,ファンデアワールス(vdW)力についての理解が必要である.本研究では走査型電子顕微鏡内ハンドリング技術を用いてナノチューブの吸着現象について検討し,vdW力を決定する未処理のナノチューブのハンマーカー定数が一般的な金属とほぼ同様の値となることを見いだした. ナノチューブ探針に加わった力情報を正しく検出するためにはナノチューブの加重下における挙動の理解が重要である.先と同様の方法で検討した結果,ナノチューブが等方的な連続体として取り扱えることを明らかにし,その挙動が古典的な材料力学モデルで解析可能なことを示した.また,過剰な加重下ではナノチューブのキャップ部に欠陥を生じ,歪みを解放することもわかった.ナノチューブ探針によりポリカーボネート表面に加重を加えることで,表面にナノスケールの窪みを形成でき適度な加重下では欠陥は生じず連続した高密度情報記録が可能であることを示した. ナノチューブで電子デバイスを制作するときその仕事関数は重要なパラメータである.本研究では,ケルビンフォース顕微鏡によりナノチューブの接触電位差が直径に依存しその増加とともに減少する事を見いだした. 気相化学成長法で成長した先端に直径数十nmの磁気微粒子を内包したナノチューブを磁気力顕微鏡探針として用い,試料表面の磁気情報を読み出すことに成功した.磁気微粒子の直径から検出系を高感度化することで従来の探針に比べて著しい空間分解能の向上が期待できる.
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