研究概要 |
衝撃波は,可燃性気体の爆発や航空機が超音速で飛行する際に発生する.また,新幹線やリニアモーターカーと言った高速列車が長いトンネルに突入した際,列車が一種のピストンの役割を果たし前方の空気を圧縮することによっても発生する.衝撃波が発生すると,衝撃波背後の気体は高温・高圧状態となり危険である.さらに衝撃波によって誘起された高速の気体が人体や建造物に衝突することにより,大きな災害を引き起こす可能性がある.現実に,漏洩した可燃性気体が何らかの理由により着火し,爆発的な燃焼を引き起こし,衝撃波を伴うことによって被害を及ぼした事例は多く報告されている.このような衝撃波による被害をなくすには,第1に衝撃波が発生し得るような設計を避けるべきであるが,現実には高圧配管が原子力発電所,高圧ガス保管庫や種々の工業設備において用いられている.衝撃波による被害を軽減するための第2の施策は,一度発生した衝撃波を如何に短い距離で減衰させるかと言った技術を確立することである.このような経緯を踏まえ,本年度は伝ぱマッハ数の高い衝撃波を生成させ,衝撃波の回折と減衰過程について実験および数値計算法を用いて研究を行った. 実験においてはデトネーション駆動型衝撃波管を新たに構築し,伝ぱマッハ数が5の衝撃波を再現性よく生成することに成功した.この方法は,酸素・水素の混合気を燃焼させることによって生成されるデトネーション波背後の高温・高圧ガスを貯気槽として衝撃波を駆動する方式であり,酸素・水素混合気の初期圧力が低い状態でも伝ぱマッハ数の高い衝撃波を駆動することができた.次に衝撃波を解放端から回折させ,衝撃波の回折現象についてカラーシュリーレン法を用いて観察した.これまで用いていたモノトーンのシュリーレン法に比較し,密度の勾配を明確に捕らえることに成功している. 実験で得られた可視化観察写真と数値計算結果を比較することにより,数値計算結果の妥当性を検証するとともに衝撃波および衝撃波背後の流れ場について定量的なデータを得ている.その結果,数値計算によって得られた結果は実験結果をよく模擬しており,現象の解明に役立てている.このような実験および数値計算により,衝撃波が回折し物体と干渉し反射した際の最高圧力を見積もることは,安全工学上,極めて重要である.なぜならば,衝撃波が回折した際の最高圧および圧力波形より建物の安全基準および設計基準を与えることができるからである.衝撃波が回折する現象について次元解析を行い,また実験および数値計算結果を勘案することにより,現象を支配する3つの無次元数があることが明らかにされ,それら3つの無次元数の間にある実験式を明らかにすることができた.また,得られた実験式は衝撃波の伝ぱマッハ数が1.3〜5.0の広い範囲に対して適用できることを明らかにしている.
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