研究概要 |
本年度は,選択ふく射加熱ならびにプロセス条件が与えるブレンドモルフォロジへの影響を定量的に評価することで本研究で提案する手法の有効性/制御性を検討した。 実験では母相としてポリスチレンを97wt.%,分散相として炭素粉を含有するポリエチレンを3wt.%含む試験ブレンドを用いた.樹脂可塑化装置の出口部にふく射加熱用の窓を有する試験ダイを接続し,その内部において平均せん断速度255s^<-1>で流動しているブレンド材料に対して選択ふく射加熱を行った.ふく射加熱源にはYAGレーザを使用したが,その発振波長である1063nmにおけるポリスチレンとポリエチレンの吸収係数はそれぞれ46と102,000m^<-1>であることが分光測定により求められた.このような条件下におけるブレンド状態の変化を観察するために,ダイより押し出された試料をウォータバスにより急冷し,そのモルフォロジの固定を行った.次いで母相であるポリスチレンをトルエンに溶出させ除去し,分散相のポリエチレンの形状ならびに大きさを電子顕微鏡を用いて測定した. 選択ふく射加熱を行うことで,分散相であるポリエチレン液滴のブレークアップが促進され,平均粒子径が小さくなることが示された.またその促進度合いに対して,本実験で使用した供試材料においては溶融温度やせん断速度といった成形条件よりも,系に供給したふく射強度が大きく影響することが明らかとなった.さらにその影響は単純ではなく,ブレンド材料の分散促進に対して最適なふく射強度が存在することが示唆された.この点を検討するために,樹脂の粘度比に対して分散相の粒子径に成形条件や物性値を加味することで得られる無次元数(キャピラリ数)をプロットすることでマスターカーブを作成し考察を行った.その結果,選択ふく射加熱によるブレンドモルフォロジ(分散相の平均粒子径)の変化は従来のせん断速度や材料の粘度比の変化と同等に議論できることが明らかとなった.以上の知見より,本研究で提案する手法が従来手法とは異なったアプローチであるにも関わらず,同じくブレンドモルフォロジを制御し得る新たな手法として成立することを確認した.
|