研究概要 |
前立腺癌および肥大症の診断は,前立腺癌は凹凸不整の増殖で高度が著しく増加しているもので肥大症は軟らかな左右対称の肥大という特徴に基づいた医者の示指を肛門より挿入して行う直腸内触診法に超音波探触子を用いた超音波断層法を併用して行うのが一般的である.しかしながら触診は曖昧な人間の指感覚に依存するため,診断の結果は医師の経験に大きく影響される.このため,より客観的に診断結果が得られる測定方法の開発が求められている.機能性材料の一つである高分子圧電ポリフッ化ビニリディン(PVDF)フィルムは,圧力パルスに対する応答が人間の皮膚の感覚受容器の一つであるパッシーニ小体の応答によく似ていることが知られており、触覚センサの受感材として注目されている。 以上の事より本研究ではPVDFフィルムを受感材として用いた人間の示指に代わり柔らかさを判別できる触診センサの開発を行った。センサの構造は基盤のアルミ板の上にセンサ母材のスポンジゴム、さらにPVDF受感材そして保護膜のプラスチックフィルムを重ねた層状態であり、また感度を増すためにゴム突起が付けられている。開発の際、本年はセンサ母材のスポンジゴムの硬さや形状を検討し、さらにそれを先端に装着した駆動機構を有するセンサを製作した。駆動機構には市販の電動歯ブラシや携帯電話機の中に用いられている小型モータなどを用い能動化を試みた。このセンサを用い実験室レベルでの数種類のシリコンゴムとスポンジゴムからなる人工柔軟対象物の硬さ判別実験、また親指の付け根部分の生体組織硬さ試験、さらに臨床実験を行った。得られた結果より硬さの違いによりセンサ出力の大きさは異なり(硬くなるほど出力は大きい)前立腺の硬さの判別が可能であり、開発したセンサの有効であることを確認した。また、センサ先端部の形状について接触角度などを考慮し改良を行い、臨床実験でさらに判別を確実なものとした。
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