研究概要 |
アクチュエータ自身の有する出力限界,振幅制約等を考慮した上で構造系の振動制御を行うための制御系設計手法を確立し,その有効性をシミュレーションと実験により示すことを目的として,2年間にわたり研究を行った結果,以下の成果を得た. まず,制御入力と振幅に制約のあるアクチュエータに関するモデリングとして,制御入力制約については,出力限界で飽和する現象を双曲線正接関数で表現し,アクチュエータの振幅制約については仮想的にハードニングスプリングが並列配置されていることを仮定して,この制約問題を連続関数により表現した.一方,減衰係数の切り替えで制御を行ういわゆるセミアクティブ制御に関しては,ダンパの粘性流体の流量を調節するバルブ開度に制約を持たせ,これを双曲線正接関数表現を適用して定式化した.これらの非線形特性を有するアクチュエータのモデリングに基づき,構造系全体を時変系状態方程式として表現し,線形行列不等式に基づくゲインスケジュール手法を用いて構造系に対するアクティブ動吸振器およびセミアクティブ振動絶縁装置の制御系設計を行った. アクティブ動吸振器に関して制御実験を行った.実験モデルとしては4自由度構造物とし,アクティブ動吸振器のストローク制約,制御入力制約を満たすよう実験装置を設計,製作した.製作された実験装置に,アクチュエータとしてボイスコイル型リニアモータ,センサには差動トランスを実装した.そして,制御入力の大きさとストロークに対応したゲインスケジュールド制御器をコンピュータに実装し,構造物基礎部からの外乱の大きさによって,スケジューリングされた制御器が適切に動作することを確認した.実験結果から,ゲインスケジュールド制御器が従来の固定制御器に比べ,優れた制振性能を有することを様々な地震波形に対して確認し,アクチュエータの振幅,制御入力に飽和が生じてもシステム全体の安定性を損なうことなく,入カ外乱の大きさに常に適応して制御系が変動することで,優れた制振性能を示すことを実験により確認した.
|