研究概要 |
本研究では,昨年度に引き続き圧電フィルムを分布型センサ/アクチュエータとして用いた柔軟梁の振動制御についておもに数値解析的に検討した.振動モードのひずみ関数の重畳によってセンサ/アクチュエータの形状を決定する手法を適用して,まず,梁の境界条件を両端単純支持とした場合について考え,モード形状関数が三角関数で表現できることを考慮して,センサ/アクチュエータ形状を重みつきのフーリエ級数展開で表現し,重畳に考慮するモード次数を1から徐々に増加させていった場合について具体的に計算した.各項につける重みを1/(波数)^3とした結果,従来のモードセンサ/アクチュエータに相当する項数1の場合から,数個の振動モードを検出/操作する多モードセンサ/アクチュエータ,さらに広い周波数帯域にわたって存在する非常に多くの振動モードを検出/操作するセンサ/アクチュエータ形状が求まり,この極限が従来用いてきた三角形状センサ/アクチュエータに収束することも確認できた.また,この重みは絶対値が等しく符号が逆となる二種類の重みが各モードに対して設定できるので,原理的には無限個のセンサ/アクチュエータ形状があることもわかり,奇数次項の符号を正/負にとることにより大きく分けて二つの形状が存在することを示した.ついで,この1/(波数)^3の重みをつけたセンサ/アクチュエータを同時使用し,直接速度フィードバックを適用した場合を考えて,各モードのモード減衰効果の制御による増分について定式化し,この重みによって,各モードに均一に減衰効果が付与されることを示した.よって,これを基準として重み値を増減させてセンサ/アクチュエータ形状を設計すれば,二個以上の任意の個数の振動モードからなる振動モード群に対し減衰効果の付与を任意に設定することが可能となる.最後に,モード形状関数が三角関数で表現できない境界条件への適用例として,片持ばりに対するセンサ/アクチュエータ形状を計算した.全モードを検出/操作したい場合,長方形状あるいは三角形状ではなく本手法の適用によって求まった新たな形状を用いることが適していると考えられる.
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