研究概要 |
各種モータがコンピュータにより制御されるようになった今日では,モータで発生するサージノイズや高周波ノイズを効率よく吸収し,機器の誤動作や破壊を未然に防ぐことが重要である.特に直流モータにおいてはブラシ-整流子片でインダクタンスのキックオフ等にともなうノイズの発生が問題となり,これらを除去するためにバリスタが用いられる場合が多い.特にSrTiO_3系セラミックバリスタは,比較的電圧-電流特性の非直線性(α係数)が大きく,静電容量も大きいため,サージ吸収のみならず高周波ノイズの吸収にも優れた特性を示す.このため,各種携帯機器等の静電気対策としては勿論のこと,直流モータ等のノイズ対策としても広く用いられる.しかしながら,大きな静電容量は時としてモータのインダクタンスとともに共振現象などを引き起こすことがある.このため,使用するモータの特性に応じたバリスタ特性の最適化が望まれる. 本研究ではバリスタ表面から内部への酸素濃度勾配などを模擬でき,かつ非線形をも考慮した等価回路を作製し,バリスタを表面から研削し,誘電特性,電圧-電流特性を実測し,cut and tryにより計算値と比較することにより,等価回路モデルの各パラメータ値を求めた.また,決定されたバリスタの等価回路モデルは,実際のサンプルのバリスタと誘電特性,電圧-電流特性などの電気的特性が極めて良く一致することを示した.さらに,この等価回路から直流モータの整流子の短絡,開放に伴うノイズがバリスタによりどの様に吸収されているのかを解析した結果,ノイズ電流は表面から内部の導体層へ向かい,ここを通って再び表面へ向かうものが全体の80%程度と大きいこと,表面近傍を流れる電流も全体の11%程度と比較的大きくなっていることが判明した. これらのことから,等価回路モデルを用いると,ノイズの吸収機構とともに,表面から内部に向かう各部の特性の変化とノイズ吸収特性への効果が明らかとなり,本成果は今後のバリスクの最適化に極めて有用であると思われる.
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