研究概要 |
本研究は,電気的効果として交流電界や直流高電界を用いて,具体的に生命研究に必須の遺伝子導入技術,細胞の凍結保存技術,有用蛋白質の放出技術に応用発展させることを目的とする. 1.高電圧直流パルスによる酵母細胞内からの蛋白質放出 従来は遺伝子導入にのみ用いられていた高電圧パルスによる細胞膜の可逆的破壊を利用して,細胞の生存活性を維持したまま細胞内部の蛋白質を有効に放出させることを試みた.遺伝子導入用の高電圧パルス発生装置を用い,酵母細胞に高電圧パルスを印加したときの外溶液中に含まれる蛋白質を新規に購入した電気泳動装置などで分析した.細胞の培養条件や菌種,さらには高電圧パルスの電界強度や時定数,印加回数などを検討し,細胞内の蛋白質を放出させることが可能となった.これにより将来的には医薬品のような生理活性蛋白質など大有効な生産が期待できる. 2.ストレス応答による高電圧パルス耐性を利用した遺伝子導入効率の向上 細胞にストレスを与えると,それに応答してストレス蛋白質をコードする遺伝子が速やかに活性化される.また,予めストレスを与えた細胞は,凍結処理や高圧環境などの2次ストレスに対する耐性を獲得する.ここでは高浸透圧のストレス応答による2次ストレスとしての高電圧パルス耐性の影響を新たに確認した.結果として,直流高電圧パルスを用いた遺伝子導入法で,高浸透圧ストレス処理によって従来法に対して大幅に遺伝子導入効率を向上させることが可能となった.これにより生命研究分野のさらなる発展が期待できる.
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