研究概要 |
リラクタンストルク応用電動機の中でもスイッチトリラクタンスモータ(SRM)は,磁気吸引力のみを用いたモータであり,極めて簡易な構造を有し,高速運転に耐えられる,低速で大トルクを発生できるという特長がある。SRMを実用化する上で最大の問題はトルク脈動に起因する振動と,磁極端部に発生する磁束集中による磁気音(騒音)である。研究代表者の所属する研究室では,これらの問題点を解決するとともに,トルク・重量比をさらに改善する目的で,永久磁石を併用したハイブリッド方式のSRMを考案した。本電動機は回転子鉄心に永久磁石を挿入し,リラクタンストルクと永久磁石によるトルクを併用する,新しい理論の電動機である。昨年度の科学研究費補助金(奨励A)により,本電動機の駆動システムを試作し,制御プログラムの開発を行った。 これらの成果をもとに本年度の研究では以下のようなことを行った。 (1)実験による基本特性の検証 本電動機の出力特性を観測し,実用的であることを確認した。 (2)最適制御プログラムの開発 一般のSBMに用いられる「進み角制御」や「パルス幅制御」を本電動機に採用し,トルク特性を観測した。この結果により,負荷によって最適なパルス幅が存在し,さらに速度に応じた進み角の調整を行うことで,トルク特性が向上した。また,固定子を順に励磁していく際に,励磁極をNSSとする場合とNNSとする場合とで,固定子・回転子間に作られる磁路の長さが変わり,特性に大きく影響することから,トルク特性の更なる向上を目指したプログラムを開発した。 (3)モータ構造の再検討 先の磁路の変化による特性変化を解析により確認するため,有限要素法による全体構造解析を行った。また,本電動機の損失において,渦電流による影響が無視できないほど大きな事が分かり,回転子構造の変更が必要であることが判明した。
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