研究概要 |
極低温領域における複合絶縁系の放電現象は不明な点が多い。このような特殊環境で用いられる機器の信頼性を確保するために,極低温複合絶縁を研究することが重要であると考えられた。 本研究では低温冷媒と固体絶縁で構成される,比較的短いギャップを有する複合絶縁系の放電メカニズムの解明を中心に検討を行った。 初年度は,測定計システムの構築を重点に行い,パソコンで制御できる直流電圧印加システム,温度計測系の構築を行った。また,冷媒と固体の複合系及び,空気と固体の複合系について放電メカニズムの検討を行った。固体には代表的な絶縁材料である高分子フィルムを用いた。気体と高分子フィルムで構成される複合絶縁系においては,固体フィルムの絶縁破壊の強さによって,複合絶縁系の絶縁が決定されることを見いだした。一方,低温冷媒と固体フィルムで構成される系の破壊は,電圧の極性によって決まり,負極性においては低温冷媒中の絶縁破壊の強さに依存し,正極性においては電界集中によって複合絶縁系の破壊が決定されることがわかった。 次年度は,初年度で得られた結果をさらに検討するため,印可電圧を変化させ,蓄積電荷の影響を重点的に検討した。その結果,極低温においては電荷の注入は小さいことが示され,表面での電荷蓄積と放電の伸びが問題と考えられた。そこで,固体表面における放電の進展を検討するため,絶縁物をフィルムから,強化繊維プラスチックに変え放電の進展状況を検討した。温度の変化と共に,負極性の放電が正極性に比べ進展しやすい状況にあることがわかった。
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