研究概要 |
これまで発振器の結合系に見られる相互同期現象について盛んに研究が行われてきた.近年この発振器の結合系をメモリやニューラルネットワークへ応用しようとする試みが報告されるようになった.報告者らはこれまでにRCウィーンブリッジ発振器を1つの抵抗で結合した回路に見られる同期現象を報告し,そのシステムが実用性の高い回路であるとして注目してきた.本研究はこのようなRC発振器の星形結合系をネットワーク状に結合したシステムを提案し,メモリやニューラルネットワークに応用していくことを目的としている.昨年度はオペアンプで構成されるウィーンブリッジ発振器の結合系を2次元格子状に拡張したネットワークを提案し,星形結合系と同様,3相および同相同期が見られ,各発振器の位相によってネットワーク内の各発振器が3個のクラスタに分類されるという現象を確認した.しかし,発振器をオペアンプで構成する場合,オペアンプに多数のトランジスタが含まれており,ICチップ化する場合にチップ面積の利用効率が悪くなるという問題点が考えられる.そこで本年度は,報告者らはウィーンブリッジ発振器をオペアンプを用いず,トランジスタ2個といくつかの抵抗とコンデンサのみで構成し,それらを1つの抵抗で星形結合したシステムを提案し,そこに見られる現象を調べた.また回路の動作の高速化のため,工学的に広く利用されている高周波発振器である,コルピッツ発振器の星形結合系を提案した.これらのシステムでは,オペアンプを用いたシステム同様,各発振器の位相がずれて同期するような現象が見られるため,初期状態の変化によって多くの安定な異なる位相状態を得ることができる.特にコルピッツ発振器を用いたシステムでは回路の高速化や小型化が実現できた.したがって,本システムはニューラルネットワークやメモリへの応用に有用であることが確認された.
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