研究概要 |
本年度の研究実績は以下の通りである. 1.遅延特性を有するセルラーニューラルネットワーク(Cellular Neural Network,以下CNN)が完全安定であるための新しい十分条件と,他の研究者によって予想された完全安定条件に対する反例をまとめ,IEEE Transactions on Circuits and Systems-Iに発表した. 2.CNNに対する二つの既存の完全安定条件が同一原理で導出できることを示すとともに,これらを統一的に扱うことのできる新しい十分条件を導出した.この結果は,国際会議2000 International Symposium on Nonlinear Theory and its Applicationsにおいて発表された.また,遅延特性を有するCNNに対しても同様の考察を行い,新しい十分条件を導出した. 3.与えられた平衡点集合を実現するCNNの設計問題は,連想記憶やパターン認識への応用において基本的かつ重要な問題である.これまでに,特異値分解を利用したCNN設計法が提案されているが,その方法では完全安定性が保証されないという問題があった.そこで本研究では,結合を対称にすることにより完全安定性を保証する新しい設計法を提案した.しかしながら,まだ問題点も多く,提案法に改良を加えていく必要がある. 4.2個のセルからなるCNNのダイナミクスを詳細に解析し,ある仮定の下で,CNNが完全安定であるための十分条件およびリミットサイクルが存在するための十分条件を新たに与えた.その過程で,2個のセルからなるCNNの完全安定性に関する従来の結果に誤りがあることを明らかにした.この成果は,平成13年度に国際会議等で発表したいと考えている.
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