研究概要 |
磁気記録の高面記録密度化には,高線記録密度化とともに高トラック密度化も重要であるが,急峻なヘッド磁界分布を有する単磁極ヘッド・垂直二層膜媒体系を用いた垂直磁気記録は原理的に有利であると考えられている.100Gbit/inch^2を超える面記録密度を達成するためには,10nm領域でのトラック端部の記録機構,特にイレーズバンドを検討することが重要になる.これまでの研究成果より,イレーズバンド幅は測定誤差内で記録電流および記録密度依存性を示さず,30nm程度の狭イレーズバンド幅が得られている. 一方,システムとして考慮した場合,トラック端部に発生するノイズは読み出しのオフトラック精度を低減させるため,高密度化の制限となる.オフトラックオーバーライトパターンのノイズプロファイル測定結果より,広イレーズバンド幅を生ずるリングヘッド・長手記録媒体の系では顕著なエッジノイズが観測されるが,単磁極ヘッド・垂直二層膜媒体の系では狭小イレーズバンド幅に対応しエッジノイズがほとんど観測されなかった. トラック端部における記録機構を解明するため,3次元磁気記録シミュレータを用いて書き込みヘッドの磁界分布を調べた.長手記録用リングヘッドは,トラック端部においてヘッド走行方向に緩やかに裾を引く磁界分布を持ち,磁界勾配は小さくなる.トラック幅方向の磁界勾配分布は,磁界強度を高めるとトラック端部で減少し,トラック端外部でも緩やかな磁界が存在する.この結果,トラック端部における記録分解能が低減し,イレーズバンド幅,エッジノイズが増大したものと考えられる.一方単磁極ヘッドはトラック端部で急峻な磁界分布をもつため,トラック端外部にほとんど磁界が漏れない.トラック幅方向の磁界勾配分布は,ヘッド磁界強度を高めてもトラック幅にわたり急峻な磁界勾配を保持するため,高いトラック分解能を持つことが示された.
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