研究概要 |
リニアメント抽出時に用いられる専門家の知識情報と,リモートセンシングデータおよび知識情報に包含される「あいまいさ」を考慮したリニアメント抽出法の開発を目的とし,ランドサットTM(Thematic Mapper)データを用いた線分抽出アルゴリズムについて検討を加えた。 TMデータは受動センサにより取得されるため,これまでは中間赤外域で取得された単一バンドデータを用いた解析が行われているに過ぎなかった。しかしながら,マルチスペクトルデータであるTMデータを効果的に用いることにより地質構造の反映した線分要素の自動生成が可能と考えた。そこで,始めに各バンドデータ(熱バンドデータを除く)のヒストグラムの形状(歪度・尖度)に着目したエッジ自動抽出法について検討を加えた。その結果,特徴の異なる複数のバンドデータや空間情報の異なる他時期に取得されたデータを用いた場合でも,雲や雪および市街地など,リニアメントの構成要素には成りにくいエッジの除去が可能であることを明らかにした。 次に,種々の「あいまいさ」を考慮し,ミクセル(複数の土地被覆物の輝度情報から構成される画素)を推定可能なファジィ推論法を用いて土地被覆分類を行った。また,リニアメントと水系の関連が強いことに着目し,水系に関する分類結果をリニアメント抽出のための入力要素として用いるとともに,市街地などの分類結果は構成要素には成りにくいと考え,市街地と分類された領域に抽出エッジが存在する場合は除去した。さらに,各バンドデータによる抽出エッジと分類結果を段階的に用いるリニアメント抽出法について検討を加えた。 その結果,提案法により抽出された線分は,起伏量図が示す地形情報(起伏量の変化域・鞍部)との間に強い関連のあることを明らかにした。また,目視判読により専門家の抽出したリニアメントとも良好に対応することを明らかにした。
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