研究概要 |
本研究は,超高次元リモートセンシング画像から定量的な情報を高精度に抽出する手法の開発を目的としている.本年度は,反射スペクトルにもとづく濃度定量アルゴリズムを開発した.従来,衛星リモートセンシングにおいては,経験的に選択された二つの観測波長の反射率の比から海洋のクロロフィル濃度を推定している.しかしこの方法は,クロロフィル以外の共存物質の影響を受けやすく,高精度な定量は困難であった.ここではまず,海中に存在するクロロフィル,溶存有機物,懸濁物質の3種の物質を考慮し,Sathyendranathのモデルにもとづいて,種々の濃度における分光反射率をシミュレーションで求めた.このデータをもとに,濃度定量に最適な特徴を抽出し,濃度を推定する実験をおこなった.反射スペクトルの高次元データを圧縮して低次元の特徴空間に表現し,つぎに,クロロフィルによる反射率変化を目的信号S,共存物質による反射率変化をノイズNとみなしたとき,SN比が最大となるように特徴空間の中に特徴軸を定めた.この特徴軸が,クロロフィル濃度の定量に最適な特徴に対応する.この処理には,すでに開発した目的指向型の特徴抽出アルゴリズムを適用した.特徴量とクロロフィル濃度との関係を定めておくことにより,未知試料のクロロフィル濃度が推定できる.シミュレーションデータを用いて従来法との精度比較をおこなった結果,共存物質の影響が大幅に低減され,推定精度が向上することが確かめられた.本アルゴリズムは,クロロフィル以外にも各種の対象へ適用が可能である.
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