研究概要 |
昨年度までに,色恒常性の計算論モデルに基づいた画像情報からの反射率抽出法を確立したものの,被写体に補助光が届かないような野外での撮影には不向きであるという問題点が残されていた。本年度は,こうした問題を解決するために,偏光フィルタを用いた方法を検討した。具体的には,照明光の成分を抽出するために、ここでは画像中のハイライト成分に着目した。ハイライトとは鏡面反射のことであり、他の成分と違い偏向されていることを利用し、これを偏向フィルタにより抽出する。しかしながら、ハイライト成分は他の領域に比べ輝度域が高いため、通常のCCDでは有効ダイナミックレンジの範囲外となる場合が多い。そこで、偏向フィルタの角度、CCDのシャッタースピードを数段階変化させた画像を複数枚撮影し、それらを統合することで高ダイナミックレンジ画像を生成し、そこからハイライト成分を抽出する方法を提案した。これにより推定したハイライト成分から対象物の反射成分を推定することが可能となった。しかしながら、こうした高ダイナミックレンジの画像を単純にCRT等の輝度域にあわせて表示した場合、極端にコントラストが失われれてしまう。通常はトーン変換等により適当な輝度域の画素のみをコントラスト強調して表示するが、その場合、それ以外の輝度域の領域は黒つぶれあるいは白つぶれを起こしてしまう。そこで本研究では、人間の視覚特性の中でも順応特性をモデル化し、人間がそうした高ダイナミックレンジの画像を見たときの知覚を予測し、これに近い効果をもつ画像を生成する方法を構築した。これにより、空間的にアダプティブに順応し、高ダイナミックレンジの画像を再現した場合でも、シーン全体のディテールを失うことは無いことを確認した。
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