研究概要 |
瞬時周波数f_i(t)は解析信号z(t)の位相角の微分としてf_i(t)=1/(2π)d/(dt)[argz(t)]で定義される.しかし、定義式による推定法は一般に雑音に弱いと考えられる.そこで、昨年度は実信号x(t)の解析信号z(t)を求め,その解析信号z(t)の時間一周波数分布から瞬時周波数と瞬時帯域幅を推定するシミュレーションを行った。その結果、解析信号z(t)に変換するためのHilbert変換の性質から,有限長の信号を離散化するという操作のために、連続信号には表れない性質が離散信号に表れることを明らかにした。 本年度は、瞬時周波数ではなく、瞬時帯域幅に関する研究に焦点を絞って理論的に検討した。瞬時帯域幅は比較的よく研究されている瞬時周波数に比べ、まだ詳しく研究されているとは言えない。瞬時周波数は一般的に、時間-周波数分布の分散と考えるのが普通であるが、狭帯域信号の場合はどうするかなど問題点も多い。そこで、情報理論的な視点から、まず確率過程のα次等価帯域幅を定義した。これは、Renyiのαエントロピーから導かれるもので、これまでに提案されている重要な帯域幅の定義を含むような一般的な確率過程の等価帯域幅のクラスを定義するものである。現在のところ、心音のように非定常な信号における瞬時帯域幅を推定できる段階ではないが、今後の研究には期待が持てる。
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