研究概要 |
多くの制御系CAIソフトウェアは制御系の解析,設計,シミュレーションをサポートするが,リアルタイム制御機能を提供しないので,制御実験は別のソフトウェア環境で行われる。大学の実験演習や企業の研修では,高額である実験装置は数台しか準備されないため,順番待ちや交代に時間がかかり,効率的に実験が行えない。本研究では,モーバイルコンピュータによる実験装置の共有を実現することにより,制御系の解析,設計,シミュレーションからリアルタイム制御実験までをシームレスに学習できるCAIシステムを開発した。具体的には, (1)モーバイル環境の構築: 申請したパーソナルコンピュータと2台のノート型コンピュータに無線LANアダプタを取り付け,ワイヤレスな通信を実現するモーバイル環境を構築した。そして,リアルタイム制御時に通信するデータ量を決めるため,コンピュータの配置について検討し,低速な通信速度の影響を実験により調べた。 (2)通信プロトコルの決定: 制御実験を行うためのモーバイルコンピュータと実験装置サーバ間の通信プロトコルを通信速度を考慮して決定した。 (3)CAIソフトウェアの開発: ネットワーク通信機能を申請者が開発した科学技術計算ソフトウェア(MaTX)に追加し,提案する制御系CAIソフトウェアを開発した。実験装置サーバソフトウェアはリアルタイム機能を有するRtLinuxで,クライアントソフトウェアはWindowsとUnixの両方で動作する。 (4)リアルタイム制御実験: パーソナルコンピュータに入出力ボードを組み込み,申請している電子部品,機械部品を用いて倒立振子装置と接続し,実験装置サーバを構築した。そして,開発したCAIシステムを倒立振子の安定化制御に適用し,その有効性を確認した。
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