研究概要 |
[速度制御用プラントモデルの同定]入力が加振周波数,出力がロータ速度で,乗法的摂動を持つプラントを仮定し,システム同定を行った. [連続時間むだ時間系に対する実装可能な補償器設計法の開発]むだ時間要素を有限次元近似して保守性の低い設計を行う場合,従来知られている設計法ではむだ時間要素の有限次元近似誤差を実装する必要があり,現実的には補償器を実装できないことがわかった.そこで,むだ時間要素と有限次元システムを用いて実装が可能な補償器の設計法を開発したシミュレーションを行い,開発手法の利点を示した. [定速度制御実験]開発した設計法を用いて補償器を設計し,定速度制御実験を行った結果,実際の感度特性が理論計算結果と大きく違うことがわかった.これは,システム同定の際の入力信号の振幅を,ある1点に固定したのが原因であると考えられる.そこで,これを数点変えてシステム同定を行ったが,不確かさの見積もりが非常に大きくなり,周期外乱の抑制は困難であることがわかった.ロータの慣性モーメント等の物理パラメータを陽に含むプラントモデルを構成し,より不確かさの小さいモデルを構成する必要がある. [微小角変位測定系の構成]本モータ評価キットに搭載されているロータリエンコーダ(180ppr)の場合,目標位置に到達する直前で加振を停止するという簡単な制御により,十分な位置決め性能が得られることを確認した.さらに位置決め分解能を高めるために,レーザーと一次元PSDを用いた光テコ式の微小角変位測定系を構成し,校正を行った結果,10000ppr相当の分解能を得た. [高精度位置決め制御系の検討]短時間ステータを加振したときのロータの角変位(静止位置から次の静止位置までの角度)を測定した.その結果,系の時定数とむだ時間が共に約100μsecであることがわかった. [離散時間むだ時間系における補償器実装時の計算量を低減する手法の開発]本モータの応答は非常に速いため,制御系のサンプリング時間を十分短くする必要がある.一方,サンプリング時間に対してむだ時間が長くなると,制御則の計算量が増大し,サンプリング時間を短くすることができない.これを改善する設計法を開発した.今後実験を行い,来年度4月に開催される計測自動制御学会制御部門大会で発表する予定である.
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