研究概要 |
砂質土地盤の液状化強度やせん断特性を正確に室内試験から評価するためには,試料採取時から試験に至る過程で試料が受ける乱れを評価する必要がある。本研究では乱れを評価する指標として初期剛性の変化に着目し,種々の応力状態で圧密した砂質土供試体のせん断波速度をベンダーエレメントを用いて測定し比較した。さらに,凍結サンプリング試料の初期剛性をベンダーエレメントと繰返し試験により求め原位置試験結果と比較することによって,より正確な原位置のせん断特性を求めるための再圧密や評価法を検討した。その結果,以下のような成果が得られた。 1.堆積構造と応力状態の異方性が初期剛性に及ぼす影響について (1)等方応力状態において,堆積面に対して平行に伝播・振動するせん断波の速度が他の方向よりも高くなり,その比は豊浦砂で1.05,火山灰では1.13であった。 (2)堆積面に対して垂直または平行に伝播し,平行または垂直に振動するせん断波の速度は等しい。 (3)せん断剛性(せん断波速度)は,せん断波の振動及び伝播方向の応力に依存し,それと垂直な方向の応力にはほとんど依存しない。 (4)等方応力状態から離れ破壊状態に近い応力状態になるに従って,異方応力状態での初期剛性は既存の推定式で表される関係よりも低下するが,その低下割合はせん断波の伝播方向および圧密時の主応力方向によって異なる。 2.凍結サンプリング試料を用いた室内試験と原位置試験による初期剛性の比較について (1)繰返し試験から求めた剛性は,原位置試験で測定したせん断波速度から求めた剛性よりも硬質な地盤ほど低くなる。 (2)原位置試験と室内試験による剛性の差は,繰返し試験よりもベンダーエレメント試験の方が少ない。 (3)室内試験から試料の乱れを評価する場合には繰返し試験よりも原位置試験と同じせん断波速度から評価すべきである。
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