研究概要 |
前年度までの現地観測から,礫床河川高水敷土壌中の栄養塩は土壌中の粒径の小さな成分に多く含まれていること,また,比較的大規模な出水が生じた場合には,高水敷表層土壌中の細流成分が流出し,高水敷土壌栄養塩量が減少することが明らかになった.これらの研究成果をふまえて,本年度は,洪水の規模が礫床河川高水敷土壌中の栄養塩量変化に与える影響について,数値解析を用いて検討を行った.数値解析では,流れ場の計算,複数の粒径の浮遊砂の計算を行い,洪水前後の浮遊砂堆積量の変化に各粒径の浮遊砂中栄養塩量を乗算することによって,洪水前後の高水敷土壌中栄養塩量の変化を表すこととした.流れ場の解析では,一般曲線座標系による水深平均の連続式および運動量方程式を用い,浮遊砂の解析では,水深平均の浮遊砂の輸送方程式を用いた.高水敷上の浮遊砂堆積量に関する計算結果は,前年度までに観測された実測結果を良好に再現することが確認された.計算対象とした領域は緩やかに蛇行しており,その外岸側に位置する左岸側高水敷上では,洪水時に大きな流速が生じることが示された.複数の流量を対象に数値実験を行った結果,本解析対象領域では,洪水のピーク流量が約500m^3/s程度になると左岸・右岸の両高水敷上で栄養塩量の減少が生じることが明らかになった.ピーク流量が400m^3/s以下の洪水では,植生分布や微地形に対応して,局所的に微細土砂の堆積が生じ,その結果,高水敷栄養塩量の局所的増加が生じることが明らかになった.
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