研究概要 |
漂砂の非平衡性とは,漂砂の沈降フラックスと浮上フラックスが釣り合っていない状態を示し,このことが地形変化を生じる原因となっている.非平衡状態の漂砂移動が生じる場合は,流体運動が場所的に急変するため,漂砂移動形態も海底微地形(水平床か?砂漣床か?)も場所的に変化する事が考えられる.このように海底微地形も含めて,種々の漂砂移動形態にまたがって漂砂移動現象をモデル化された研究はほとんどなく,それらの現象も解明されていない.これらの観点から本年度の本研究では,水理実験により海底微地形の発達状態について検討し,種々の漂砂移動形態に適用できる漂砂移動現象のモデル化を行った.また,非平衡状態の漂砂移動の特性と海底微地形の関係についても検討を行った.得られた結果を以下に示す.(1)砂漣の発達過程の実験結果から砂漣波長,砂漣波高は時間と伴に変化し,砂漣波長は数百波以上,砂漣波高は1000波以上でほぼ定常状態となる.(2)海底微地形を砂漣波長に関してスペクトル解析を行いその経時変化を調べると,造波後300波程度では種々の波長の砂漣が存在し,時間の経過と伴に卓越波長でスペクトルのピークが明確になることがわかった.(3)単相流モデルを用いて流体運動と漂砂運動と海底微地形の相互干渉を考慮した漂砂移動現象のモデルを構築した.(4)一定水深で固定床から移動床あるいは移動床から固定床に変化する場合の非平衡状態の漂砂濃度の特性は,固定床から移動床に変化する場合砂の供給は下からのみなので流下に従って下方から漂砂濃度が高くなっていく.また,移動床から固定床の場合は浮上フラックスが無くなるので下方から漂砂濃度は減少していく.(5)航路斜面においては重力効果により砂漣の非対称性が大きくなり,1周期内に砂漣上での渦は1度しか生じず,基準点濃度が小さく浮上フラックスが小さくなり移動床から固定床に変化する場合と同様な非平衡性の特性が現れる.
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