研究概要 |
本研究は、「人が水に近づく」という従来の河川整備思想から「人に水を近づける」という発想の転換により、新たなコンセプトによる秩序ある都市景観形成・アメニティ利用の提案を目的とする。 <本川>と<派川>(人工河川)との関係に着目し、京都鴨川を本川とする派川である明神川、泉川、みそそぎ川、高瀬川、滋賀県琵琶湖より取水する琵琶湖疏水水路網、更に滋賀県大津市坂本町・大宮川を取水源として発達した水路網及び里坊庭園群を対象に、ネットワーク構造と周辺環境の調査を行った。 以下に研究成果を示す。 1.<本川-派川>系のネットワーク構造は階層構造を持つ。例えば,鴨川から取水されるみそゝぎ川,みそゝぎ川から取水される高瀬川のネットワーク構造は,Level:1(本川=鴨川)からLevel:2(派川=みそゝぎ川),Level:3(派川=高瀬川),Level:4(遣水)に到る階層性を有する.この階層構造は水位の調節機能の存在によって段階的に構成されるが、また、自然の水(wild nature)を段階的な水位調節により安定化させ、安定した水(domestic nature)を人の側に近づけ楽しもうとする意図、自然と人間との段階的な作法秩序が推察される。 2.階層的な構造を持つ疏水の各段階の景観を把握し、これにより疏水の各段階における遣水的利用の詳細を把握した。 3.水路のネットワーク構造を「分岐」と「勾配(高低差)」に着目して把握し、地形を利用した水路の線形、分岐、勾配の相互関係を明らかにした。 4.上記1〜3より得られたネットワーク構造のパタン、疏水周辺の景観構成要素について整理し、<本川>から<派川>、<遣水>に到る全体のネットワークにおける、各疏水の位置付けを6つに類型化した。これに基づき、ネットワークの中心に人間の存在(身体)を考慮した<人間-河川>系のネットワーク概念モデルを提示した。
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