研究概要 |
従来の合理的な行動仮説の枠組みは,情報獲得過程を考慮していないため,情報サービスの評価を行うには不十分であると考えられる.Simonは従来のこうした合理的な意思決定モデルの問題点を指摘した上で,限定合理的意思決定モデルの枠組みを示し,選択肢の選別とその属性に関する情報の獲得の過程を考慮することの重要性を指摘している,.こうした観点にたてば,複数の交通情報リソースが混在する都市の道路ネットワークにおいて,ドライバーがどのような情報リソースを利用し,選択肢の選別を行い,経路選択の意識がどのように変化しているのかをより実証的に分析した上で,限定合理的行動フレームワークに基づいたモデルを構築することの必要性が高いといえよう. 本研究では,こうした問題意識のもとに,第一に,ドライバーの情報獲得過程と選択肢選別過程及び,これを包含した情報提供下の経路選択の意思決定過程の分析が可能な実行動データを整備した.自己記入型と外部観測型の調査を組み合わせることで,ドライバーの見た情報の表示内容と,走行環境及び,ドライバーの選択肢選別過程,情報獲得過程,経路選択結果を1対1で対応させたデータベースを作成することとした.対象路線は,ドライバーが実際に複数の交通情報リソースを利用して経路を選択している東京都市圏の首都高速道路ネットワークとした 次にこのデータベースを用いてドライバーの選択肢選別過程と情報獲得過程の実証的分析を試みた.その結果,第一に,情報の呈示の仕方によって情報へのアクセス率や参考率が異なると共に,代替経路間の距離差や,走行経験が情報獲得過程に影響を与えていることを明らかにした.第二に,複数の交通情報リソース下では,能動的な情報獲得過程の下,逐次的に経路選別が行われているという知見を得た.
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