本年度は、室内実験装置を用いた遮水システム近傍の水分・溶質移動特性への温度影響に関する実験を実施した。直径30cm、深さ15cmの実験用カラムに砂質土地盤材(豊浦砂)を充填し、日本の埋立地で一般的に使われているHDPE製遮水シートを敷設する。中心には直径2mmのピンホールを想定した模擬破損部を設けた。そして、カラム上部から埋立地内部温度上昇を模擬するため種々の温度に設定された人工浸出水(NaCl溶液)を約7cmの圧力勾配の下でカラム内を流下させた。そして、カラム内部の種々の位置で内部水の濃度又は温度の時間変化を測定することによって、水分、溶質及び熱の流れ特性を把握した。その結果、まず標準条件として室温(約20℃)に設定した人工浸出水を使った実験では、設定した圧力勾配と模擬破損部の面積からオリフィス流れを仮定して求めた流量を基準とすると、最低8%の流量で流下した。しかし、シートと地盤材との接触面にわずかでも凹凸が生じると流量は著しく増大し、実験の再現性が困難であった。一方、溶質は模擬破損部から流入した後、速やかにシートと地盤材の境界面を半径方向9cmまでに移動し、鉛直方向に流下することがわかった。その後、流れは収縮し、ほぼ半径3cmの円筒状に流下することがわかった。また、水温を40℃まで上昇させて同様の実験を行った結果、水の粘性の増加に伴い、やや流速が増大し、また溶質の移動範囲が拡大したが、基本的には室温の条件とほぼ同様の結果となった。したがって、埋立地温度が40℃程度までの範囲であれば、漏水現象への温度影響は小さいことがわかった。
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