研究概要 |
1.陰極及び陽極としてそれぞれフェルト状炭素に脱窒細菌を固定した生物膜電極及び炭素棒を用いた完全混合型生物膜電極反応槽へpH約2.8,硝酸性窒素200mg/L,銅イオン濃度0〜30mg/Lに調整した模擬酸洗い排水を流入させるとともにC/N比1.0で酢酸の添加と通電を併用して連続処理実験を行った.槽内では,脱窒細菌の活性に影響のない濃度まで銅イオンが除去されて脱窒が進行することにより中和も達成された.添加有機物と電解生成水素のほぼ全量が効率よく同時的に脱窒の電子供与体として利用されるとともに処理水pHは,安定して6.5程度に維持された.流入銅イオン濃度を30mg/Lまで段階的に上昇させるとともに滞留時間を36時間から10時間まで短縮してもその傾向に変化はなかった.また,溶解性銅濃度は,常に2mg/L程度以下であった.従って,生物膜電極法を用いて銅イオン含有強酸性高濃度硝酸イオン汚染水の同時的脱窒・中和・銅イオン除去が可能であることが明らかになった. 2.処理水の溶解性銅濃度は,無通電系でも水酸化物や炭酸塩等の難溶性物質生成等により低下したが,懸濁成分を含めた全銅濃度は流入銅イオン濃度とほぼ等しかった.これに対して,通電系では,約50%程度に減少した.すなわち,通電系では,電極反応による銅イオンの陰極への固定が処理水の全銅濃度の低減に寄与していると考えられた. 3.酸洗い排水に共存する可能性がある種々の重金属イオンに対して,脱窒処理への水素利用が可能であることを考慮して水素生成を許容すれば,電極への通電により,鉛やニッケルイオンも除去可能であることが無生物系電解実験から明らかになり,銅に加えてこれらの重金属イオンが共存する排水への生物膜電極法の適用可能性が示唆された.
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