研究概要 |
UV照射後の二量体検出法の前段階として大腸菌ファージであるDNAファージT4を対象微生物とし、DNA抽出方法の検討を行った.抽出方法として3つの方法を検討した。(1)抽出キット(QIAGEN Lambda System)による方法、(2)UF膜による遠心濃縮,膜ろ過後,90℃の熱によるタンパク破砕による方法、(3)UF膜による遠心濃縮液に(1)で使用した抽出キットを適用する方法、以上の方法の後、アガロースゲルによる電気泳動で核酸が抽出できているかどうを確認した。 結果として(1)で抽出したサンプルでは,アガロースゲル電気泳動でバンドが観察されたものの非常に薄かった。この原因は元々50kbのλファージよりDNAを抽出するためのものであり,T4ファージは166kbでλファージと比べて長いため,カラムからの溶出が不十分であったためと考えられる。改善方法として、溶出液の溶出力を上げるために溶出液を温めることが考えられた。(2)で抽出したサンプルでは,アガロースゲル電気泳動でT4ファージのDNAによるバンドが観察されたが,T4ファージよりも大きいサイズでもバンドが観察された。このバンドは宿主菌の遺伝子の一部がろ過膜で除去しきれなかったためと考えられる。従ってこの方法では宿主菌の遺伝子の除去方法に関する改良が必要である。改善方法としては、熱破砕を行う前にDNaseを加え,宿主菌によるDNAを壊してから熱破砕を行えばよいと考えられる。(3)で抽出したサンプルはアガロース電気泳動でバンドが観察されなかった。これは、PEGによる沈殿とSDSによる外被分解の段階で、このキットにおける適用量がT4のDNAに利用できる限界を超えてしまったためと考えられる。また濃縮により全量が少ないため、カラムに吸着させた後の回収率が悪いこと、および(1)と同じ原因が考えられた。以上の検討によりDNA抽出法の確立を行った。
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