研究概要 |
本研究は,流域全体を博物館としてとらえるリバーミュージアム構想における,地域住民と来訪者との交流システムに注目した.現段階では,下記のような知見が得られている. 1)流域空間における「共演」のシナリオに関する調査…和歌山県熊野地域で開催された『南紀熊野体験博(1999.4.29-9.19)』関連の150の体験イベント群を対象として取り上げ,シナリオ分析を行った結果,河川空間は多様なイベントの受け皿であるが,自然要素との関係が強く,歴史文化,生業などに関連したシナリオ開拓の必要性を示した.とくに,「釣り」という体験メニューの独立性のあり方には問題性を指摘した. 2)流域空間におけるホスト・ゲスト間の交流実態に関する調査…『南紀熊野体験博』において設けられた「体験リーダー」へのアンケート調査により,ホスト属性の4タイプ(「知識サービス型」「駆り出され型」「趣味交流型」「趣味・インストラクター型」)を抽出し,タイプ別の意識傾向とサポート方法等の検討を行った.河川のホスト意識としては,流域として共有するホスト像の必要性を指摘した.また,ホストのサポートシステムをタイプ別に明らかにし,ホストレベルおよび役割形態との関連から,そのサポートのあり方について言及した. 3)流域空間における「共演」のシナリオデザイン手法に関する試論…シナリオのデザイン手法として,和歌山県下の河童伝説群(198)を対象としてDematel法を用いた伝説構造集約化を試み,基礎的伝説構造に流域別の個別要素がからむという図式を示した.今後の伝説等を用いたコンセプト抽出にも適用できると考えられる. 4)具体的流域空間を対象としたRMのコンセプト企画提案…具体的流域空間を対象としたRMのコンセプト提案としては,熊野川を取り上げた.「祈る文化」「獲る文化」「渡す文化」「組む文化」という4要素をマスターコンセプトとして提起し,それに基いて「熊野川RMルール案」,「熊野川RMホスト案」「熊野川RMにおける新プログラム提案」等を構想した.あわせて,マスターコンセプトの重要性について指摘した.
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