研究課題/領域番号 |
11750518
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
建築環境・設備
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
坂本 慎一 東京大学, 生産技術研究所, 講師 (80282599)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2000年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1999年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | 拡散体 / 浮雲反射板 / ホール音場 / 室形状 / 有限差分法 / 縮尺模型実験 / 多次元音場シミュレーション / 聴感評価実験 / 音波入射角度 |
研究概要 |
室内の音響特性をより良くする目的で、音響空間における壁面のディテールとして様々な形状の拡散体が設置され、またホールによっては空中に浮雲と呼ばれる不連続反射板が吊られることがある。拡散体に関しては、その単体での音波散乱性能に関して実験および数値解析による検討が多く行われ、その形状および寸法関係に関する設計チャートが提案されているものの、実際の音響設計に際しては明確な指針がない。浮雲に関しては、設計指針はさらに少なく、不連続性に起因する周波数特性の乱れが指摘されているが定量的検討は行われていない。ホールにおける壁面拡散体、浮雲などの反射板を有効に活用した音響設計を行うためには、「壁面拡散体および浮雲反射板等の音響反射板が室内音場全体に与える音響効果」に着目した研究が必要である。この目的のために昨年度に引き続き、次の内容について検討した。 1.浮雲反射板の音響効果に関する数値解析 今年度は、これまでの差分法による数値解析に加えて新たにFMBEM法を導入し、立体配列音響反射板における反射板間の相互作用を含めて考慮した場合の物理的検討を行った。昨年度、この浮雲反射板の配列と音響効果の関係については平面配列の場合について検討し、(1)その形状をランダムに変化させることによって反射音場内の多くの受音点において周波数特性が平坦化され、音響的に望ましいこと、(2)反射板を立体形状にすることによっても周波数特性が平坦化されること、等の知見を得ている。それに加えて不連続反射板を階段状に配置した場合には、(1)場所によって低周波数域の音圧レベルに大きな違いが生じること、(2)周波数特性については、顕著なディップが生じる周波数が分散し、それぞれのディップが緩和される傾向にあることが分かった。 2.数値解析による多次元音場シミュレーションシステムの開発 数値計算結果に基づいて聴感評価実験を行うために、新たに多次元音場シミュレーションシステムを開発した。このシステムは、設定した仮想の音場において、対象とする受音点での方向別インパルス応答を差分法により計算し、それらの方向別インパルス応答を無響室内に設置した多チャンネルスピーカにより再生するものである。本システムに関する原理的検討およびシミュレーション精度に関する基礎的検討を行った。単一反射音の方向再現性に着目し、その物理的再生精度を音響インテンシティ法を用いた物理実験により、聴感的再生精度を方向定位実験により検討し、本システムが十分な再生精度を有することを確認した。 3.拡散体の音響効果に関する聴感評価実験 2.において開発したシステムを用いて音響拡散体の周期の違いや形状の違いが聴感印象に及ぼす影響について評価実験を行った。フラッターエコー障害の除去効果および拡散体形状の違いによる空間的な印象の差違について検討した。フラッターエコーの程度に着目した場合には拡散体周期をパラメータとして整理できる可能性が見出せたが、単一反射音の聴感印象についてはその違いが微妙であり、今回の検討ではその判断基準を見出すまでには至らなかった。今後、本シミュレーションシステムを用いて体系的な検討を行う必要がある。 以上本研究によって、拡散体形状と室形状の相互関係、浮雲反射板の形状およびその配列と音響物理特性の関係などについて多くの知見が得られたとともに、数値解析による聴感評価実験のための再生システムを開発することができた。
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