研究概要 |
これまでの実験では,振動の発生を直前に被験者に対して予告することがほとんどであり,被験者は振動を感じることを意識して実験に臨んでいる。しかし,実際の生活環境で振動の発生を予知する居住者はほとんどいないため,本研究ではこの違いが知覚閾に及ぼす影響を知ることを目的とする。 本年度は,被験者が振動の発生を予知せず,できるかぎり意識しない状況における実験の結果を検討し,被験者の状況や意識などの周辺要因が知覚閾に及ぼす影響を考察した。振動発生に対する予知の有無が知覚閾に及ぼす影響を知るための実験の結果から,振動の発生を予知せずリラックスした状況では,振動の発生を予知している場合よりも大きい振動を感じない場合があることがわかった。同時に,被験者が振動の発生をどの程度強く意識しているかなどの他の周辺的な要因が知覚閾に強く影響を及ぼすことがわかったため,それらの周辺要因の影響を知る実験の結果を検討した。その結果,意識的な周辺要因のなかでも,揺れているに違いないと強く意識することでより敏感に振動を感じるようになること,その影響量は振動数範囲によって異なることがわかった。 これらを「感じる人の割合」に基づいて性能レベルの確率的な説明資料として纏めることを模索するとともに,日本建築学会の居住性能評価指針やISO2631-1と対比し,周辺要因が知覚閾に及ぼす影響が従来の評価レベルと比較してどのような位置づけにあるかを考察した。
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