研究概要 |
1つの病棟の患者を1つの集団と見なし、空間構成や管理体制,患者の属性の異なる計9病棟における患者の1日の行動調査を行った結果,以下のことが明らかとなった。 1)全病棟を通じて患者全体の1日の行動で,最も多くを占める行為は「睡眠」「横になる」といった極めて個人的な行為である。 2)全病棟を通じて患者全体の1日の行動で,最も多くの患者が滞在するのは病室であり,次いでデイルームである。 3)病棟の空間構成と患者行動の関係として,以下の内容が挙げられる。 (1)各病棟の患者行動をクラスター分析により類型化した結果、患者行為・滞在場所の2つの側面からそれぞれ5類型にまとめられた。 (2)病棟における患者の密度が低い病棟では,1日の患者の全行動中,行為としては【コミュニケーション】の割合が小さくなり【個】【嗜好】【鑑賞・趣味】といった個人的な行為の割合が大きくなる傾向が、滞在空間としては共用空間の割合が小さくなり病室の割合が大きくなる傾向がそれぞれ認められた。 (3)病室におけるプライバシーの確保および便所や洗面設備の設置などの機能性が高い病棟では,患者密度の低下の影響と同様に、行為としては個人的な行為の割合が大きくなる傾向が、滞在空間としては病室の割合が大きくなる傾向がそれぞれ認められた。また、患者の共用空間と病室の使い分けが明確になる傾向もみられた。 (4)地上階に近い病棟ほど,自由時間における患者の【外出】の頻度が高まることが認められた。 (5)喫煙室の利用者はその病棟全体に占める面積に比して多い。また、喫煙室を新設すると喫煙が増加する傾向がみられた。 (6)患者の密度が低く病室の機能性が高い病棟のほうが、消灯時間内に共用空間に滞在する患者が多くみられた。 以上の結果は,入院患者の生活において病室およびデイルームは、ともに生活の重要な拠点であること、その使われ方は病棟により多様であることを示唆するものである。また,病棟の規模やプラン構成の相違が、患者行動の相違を生み出す一因になっていることが示唆された。
|