研究概要 |
本研究では、まちづくりに関わる「主体(生活者)」の意識・行動の意味・意義、人間形成や自己実現のあり方等について、各主体のライフヒストリー及び生活世界の視点から分析した。同時にそこから、これからのまちづくりの方向と方法を探り出した。 主体の心理面をも分析対象とする本研究では、特に参与観察者として活動や人物を見つめた。調査・分析対象は主に筆者が直接・間接的に関わった以下である。*高齢者の視点からの住まい・まちづくり(M氏、A氏,帯広)/寒冷地で屋台による街活性化(S氏,帯広)/都市マスを機に住民主体の地域づくり(Ham氏、T氏,上富良野)/町の閉塞的状況で持続的活動(Has氏、I氏,上川)/地域特性活かした多面的まちづくり展開(N氏、O氏,岩見沢)/地域に根ざす柔らかな運動(語りや民芸の各活動,釧路町)/福祉・高齢化・商店街活性を一体にした活動(In氏,美幌)/その他有効な事例・人物,その上で次のことが考察された。 (1)記憶(特に青年期)を背景としたまちづくりの内容/テーマ・内容において各人物の記憶を背景にしたものが多い。その中で活動の個性化、各人物の自己実現に向かっている。 (2)協働体験による新しい自己の発見と多様なテーマ生成/多様な価値観・考え方が主体自身と活動を触発しているが、その際、議論・学習だけでなく共同体験が重要な要素である。 (3)主体・分野・個人間の共感・信頼の生成ともなう関係化/各個人・分野・主体間の信頼伴う横断的連携の中で、まちづくりと共に個人の生活観や暮らし自体を豊かにしている。 (4)地域・生活に根ざした思考と運動/テーマ・内容等いずれも自らの地域や生活に根ざしていることが、活動効果の自己還元に、また活動の持続性や柔軟性を与えている。 (5)他者・他地域からの自己触発/他地域・他者の考え・経験に触れることが、直接的なアイディアの吸収以上に、自己の生き方や活動への意欲・態度を刺激している。
|