研究概要 |
グラファイトやシリコン等の共有結合性の材料中には、非常に安定な空孔型欠陥が存在することが広く知られている。これらの欠陥は、ある特定の数の原子空孔が集まって形成されていることから、何らかの魔法数(magic number)が関係していると予想されている。また、その形状は、幾何的に高い対称性をもつことが特徴である。 それら魔法数空孔クラスターの形状を、高分解能電子顕微鏡観察によって実空間上で「直視すること」を本研究の目的としている。 電子線および中性子線照射による欠陥(空孔クラスター)が導入されたグラファイト、シリコン等の試料の作製を行った。得られた試料に対してその欠陥の安定性について調べるために、種々の熱処理(温度・時間)を行った。 特に、2次元構造を有するグラファイトを中心に高分解能電子顕微鏡観察を行った。観察時には、電子線照射による試料のダメージの低減化に十分注意を払った。[0001]軸入射で観察した中性子照射されたグラファイトには、格子像としては明瞭ではないが、微小なピット状のコントラストが観察された。これらは、空孔クラスターに起因するものと考えられる。また、[0001]軸に垂直な方向からの観察を行ったところ、シート間を突き抜けるような像は観察されなかった。以上のような3次元空間的観察により、2次元空孔クラスターの存在を突き止めることが出来た。 さらに、観察された空孔クラスターの形状を決定するために、像シミュレーションによる計算像と観察像との比較を行ったが、その空孔クラスターの形状がV4,V6,V12(またそれら以外)のいずれであるかの精密な同定には至っていない。
|