研究概要 |
序 安価に大口径のSiC基板を製作する手法として,Si基板の炭化が着目されているが,良質なSiC膜を作るための条件が極めて限られていること,また炭化時のSi基板への欠陥導入等が大きな問題となっている.本研究では,低速陽電子を用いて,Si基板の炭化によってカーボン/Si界面近傍に導入される空孔型欠陥を検出し,Siの炭化過程を研究した. 測定方法 Cz-Si基板に室温で蒸着によりカーボン(C)膜を形成した.その後,低速陽電子ビームを用いて,試料温度(室温-1473K)を変化させながら陽電子消滅γ線ドップラー拡がりを測定した.また,1573Kから急冷及び徐冷した試料についても同様の測定を行うと共に,超短パルス低速陽電子ビームにより陽電子寿命測定を行った. 結果 C/Si試料のSパラメーターの陽電子打ち込みエネルギー(E)依存性を試料温度の関数として測定した.298Kでは,E=0-4 keVでSが一定値となった.これは,陽電子がC膜中で消滅しているためである.1173KではE〓5 keV付近でSが上昇するため,C/Si界面に空孔型欠陥が導入されたと判断した.TEMにより,界面にはピラミッド型の空孔(サイズは100nmオーダー)が導入されていることがわかったが,陽電子はむしろ界面近傍の点欠陥を検出していると考えられる.TEM,SIMSの結果も合わせて検討した結果,炭化と同時に,Si基板に空孔型欠陥の集合体が導入されることがわかった.これはSiC形成に伴い導入された歪に起因すると考えられる.
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