研究概要 |
単結晶基板上の非晶質層をアニールすると、基板とある方位関係を有する再結晶層が得られる。この現象は固相エピタキシーと呼ばれており、デバイスプロセス技術として重要な役割を演じている。このとき、良好な再結晶層を得るために原子レベルでの固相エピタキシャル成長に関する知見が必要である。分子動力学法はこの分野の研究に対して有効な手段であり、従来幾つかのグループが本手法を用いて固相エピタキシーの計算機実験を行っている。しかしながら、シミュレーションに際して使用する非晶質構造の妥当性については殆ど検討されていないのが現状である。本研究では、分子動力学シミュレーションより非晶質シリコンの原子レベルでの構造解析を行った。非晶質シリコンは融液状態から急冷することにより作製した。シミュレーションにより得られた原子配列は、従来実験的に得られた非晶質シリコンの静的および動的挙動を良く再現しており、本モデルが妥当であることを示唆している。この非晶質シリコンのアニールに伴う挙動を調べた結果、最近他の研究者により提案された固相エピタキシャル成長のモデル[T.Motooka et al.,Phys.Rev.B 61,8537(2000)]に致命的な間違いがあることが明らかとなった[M.Ishimaru,Phys.Rev.B(in press)]。
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